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4.未承認医薬品等、適応外医薬品等の使用について

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 海外では既に承認され、販売されている最新の医薬品が日本では承認されていない、あるいは開発すらされていないものがあります。これらは、日本で承認を得るまでに長期間を要する『ドラッグ・ラグ』や、日本では開発すら行われていない『ドラッグ・ロス』と呼ばれています。例えば、最近では、ベンチャー企業が、有望な制癌剤等を開発する場合がありますが、資金が限られるベンチャー企業は、規模の大きな欧米市場をターゲットとするため、日本における開発の優先度は低くなっています。

 日本で承認されていない医薬品等、あるいは適応症を取得してない医薬品等を、他に日本では、治療薬がないために、患者さんが使用する方法としては、以下のような3つの方法があります。

1)人道的見地から実施される治験に参加する。
2)医療法施行規則の規定に基づいて、未承認新規医薬品等を用いた医療について、厚労省大臣が定める基準に従った臨床研究に参加する。
3)医薬品等の個人輸入に基づいて医薬品等を輸入し使用する。

これら3つについて、順番に説明します。

1)人道的見地から実施される治験に参加する。

● PMDA(医薬品医療機器総合機構)の説明によると、生命に重大な影響がある疾患であって、既存の治療法に有効な医薬品等が存在しない疾患を治療する場合に、該当する未承認薬などを使用するリスクと期待される治療上のベネフィットのバランスを考慮して、治験の参加基準に満たない患者さんであっても人道的な見地から未承認薬などを提供する制度があります。

● これは、国内の最終段階の治験(主たる治験)の実施後あるいは実施中に治験薬等を治験の枠組みで提供するものです。具体的には、「主たる治験」が実施され、企業の判断で「主たる治験」に継続して「拡大治験」を行う場合には、厚労省の検討を受けて問題がない場合には「拡大治験」が実施されるので、主治医と相談して治験へ参加できる場合があります。

  PMDA : 人道的見地から実施される治験について

2)医療法施行規則の規定に基づいて、未承認新規医薬品等を用いた医療について、厚生労働大臣が定める基準に従った臨床研究に参加する。

● 特定機能病院における未承認新規医薬品等を用いた医療への対応について、厚生労働大臣が定める基準に従って、従業者が遵守すべき事項及び担当部門が確認すべき事項に関する規定を作成する場合に従うべき基準が定められています。

● この基準では、診療科に関する基準、担当部門に関する事項、未承認新規医薬品等評価委員会に関する事項について取決めを行い、臨床研究を行う際に、その研究に参加できる場合があります。

医政発0610第24号:未承認新規医薬品等を用いた医療についての厚生労働大臣が定める基準について

3)医薬品等の個人輸入に基づいて医薬品等を輸入し使用する。

● 一般の個人が自分で使用するために輸入(いわゆる個人輸入)する場合には、原則として地方厚生局に必要書類を提出して、営業のための輸入でない事の証明を受ける必要があります。

● 但し、次の範囲については、特例的に税関の確認を受けたうえで輸入することが出来ます。この場合、輸入した医薬品等を他の人に売ったり、譲ったりすることは認められません。

 ・外用剤(毒薬、劇薬及び処方箋薬を除く) : 標準サイズで1品目24個以内

 ・毒薬、劇薬又は処方箋薬 : 用法・用量からみて、1ヶ月分以内

 ・上記以外の医薬品等 : 用法・用量からみて、2ヶ月分以内 

注① 養毛剤、浴用剤、ドリンク剤等も、医薬品と同様の扱いになる。
注② 食品、サプリメントであっても医薬品的な効能効果を標ぼうしているものは、医薬品に該当する場合がある。
注③ 重大な健康被害が起きる恐れがある医薬品等、脳機能の向上などを標ぼうしている医薬品等に含まれる一部の成分については、医師の処方箋がなければ、一般の個人による輸入は認められません。

厚生労働省医薬局 : 医薬品等の個人輸入について

医薬品等輸入代行業者の紹介

https://mttag.com/s/d_06SKycy4Q

https://mttag.com/s/_5Jb1uKYXew

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3. コロナの後遺症として、アルツハイマー病等の発症リスクが高まる?

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 昨年の12月27日の朝日新聞によれば、海外ではコロナ発症後の後遺症として、アルツハイマー病や認知機能障害の発症リスクが高まるという報告が公表されているとの事です。これらの報告は、米医学誌ネイチャーメディシン(ネイチャーの関連雑誌で生物医学分野の研究を扱っている)や英医学誌ランセットサイカアトリー(ランセットの関連雑誌で精神医学分野の研究を主に扱っている)に掲載されていることから、かなり貴重な情報と考えられます。そこで、コロナの後遺症とアルツハイマー病等との関連について、他の報告も含めて調べてみました。

 米医学誌ネイチャーメディシンに掲載された報告(2022年9月)では、米国の退役軍人の医療データベースを利用し、コロナに感染した約15万人、非コロナ感染者約565万人、及びコロナ禍発現前の対象者約585万人について、1年間追跡し、比較しています。
 総合的な結果としては、コロナ感染者の神経学的後遺症のハザード比は1.42(95%信頼区間1.38~1.47)と推定されたとのことです。
 ちなみに、個々の症状の内、コロナ後遺症として虚血性脳卒中のリスクはハザード比 1.50(95%信頼区間1.41~1.60)、記憶障害のハザード比 1.77(95%信頼区間1.68~1.85)、およびアルツハイマー病のハザード比は2.03(95%信頼区間1.79~2.31)であったと推定しています(それぞれ、50%、77%、103%増加する可能性が推定される)。
以上より、コロナ感染後12カ月目の時点での、コロナ後遺症として、神経疾患のリスクがある事から、コロナ感染症の長期的な影響を考慮する必要があるとしています。
 (引用)Ziyad Al-Aly et al., Nature Medicine 28. 2406~2415(2022)

ハザード比とは?

ハザード比とは、イベント(例えば、調査対象として、コロナ後遺症の発症数とする)の起こりやすさを試験期間全体の平均的な群間差として推定したもので、通常は分子に調査対象群(例えば、コロナ後遺症の発症数)のハザード、分母に比較対象群(例えば、コロナ後遺症の非発症数)のハザードとして相対的な効果の大きさを推算します。ハザード比が1であれば両調査群で差がないと解釈されます。イベント発生を抑える力が弱い場合にはハザード比は1を上回ります。例えば、調査対象群の比較対象群に対するハザード比が1.5であれば、調査対象群のほうが、比較対象群に対し、50%イベントの発生を抑える力が弱い(つまりイベントが50%増える)と解釈できます。このハザード比の精度を示すものが95%信頼区間であり、狭ければ狭いほどその精度は高く、95%信頼区間が1を含まない場合に、統計的な有意性がある事を示します。

 また、英医学誌ランセットサイカアトリーに掲載された報告(2022年8月)では、研究期間中にコロナに感染した約128万人および同数のコロナに感染していない他の呼吸器感染症を持つ患者とで、2年間の国際的な「後ろ向きコーホート研究(特定の条件を満たした集団を対象にして診療記録などから過去の出来事に関する調査を行う研究手法)」を実施しています。
 その結果、コロナ感染症患者では、精神医学的転帰として、認知欠如、認知症、精神障害等がコロナ感染後2年経ってもリスクが継続しているのに対し、他の非コロナ感染症患者では、これらの症状は早期に治まり、2年間を通じて、リスクが継続することはありませんでした。尚、「後ろ向きコーホート研究」では関連性の可能性は示唆し得るものの、因果関係を立証したものではありません。
 (引用)Maxime T et al.,  The LANCET Psychiatry 9  815~827(2022)

 この他にも、2022年9月に、米国のケース ウエスタン リザーブ大学は、医療機関を受診した約620万人(コロナ感染症患者約40万人、非コロナ感染症患者約580万人)の65歳以上の高齢者を対象とした「後ろ向きコホート研究」を行っています。その結果、コロナ感染症患者は、非コロナ感染症患者に対し、360日以内にアルツハイマー病の新規診断を受けるリスクが、ハザード比として1.69(95%信頼区間1.53~1.72)であったと推定しています(69%増加する可能性が推定される)。
   (引用) Xu R et al.,   J  Alzhermers Disease 89. 411~414(2022)

 一方、「コロナの後遺症とアルツハイマー病等との関連」とは、少し観点が異なりますが、米国のテキサス大学健康科学センターから、特定のワクチン接種によりアルツハイマー病そのものの発症リスクが低下する可能性が報告されています。報告によれば、破傷風・ジフテリア・百日咳の3種混合ワクチン、水痘帯状疱疹ワクチン、あるいは肺炎球菌ワクチンのうち、少なくとも1種のワクチンを摂取したヒトは、これらのワクチンを接種していないヒトに比べて、アルツハイマー病の発症リスクが25~30%低下していたとの事です。
 (引用)  Harris K, et al. J Alzheimers Disease. 95. 703-7188(2023)

 

結論

 コロナの後遺症としては、倦怠感、頭痛、息切れ、咳等、いろいろな症状がある事が知られています。今回、その中の一部の症状として、認知機能障害やアルツハイマー病等の発症リスクが高まる可能性が報告されていますが、その発現機序は明確にはされていません。
 一方で、アルツハイマー病(AD)の進行を遅らせる国内初の新しい作用機序を持つ進行抑制剤が、承認を取得し販売されています。しかしながら、本剤の治療対象となる軽度認知障害と軽度認知症の患者さんは、現時点で国内には500万人位と推定されていますが、2050年位には1000万人に達するとの推定も予測されています。
 従って、コロナ後遺症としてのアルツハイマー病を含め、治療薬のみで、本疾患の治療をカバーするには、限界があると考えられます。アルツハイマー病の発症の危険リスクとして加齢、家族の病歴、遺伝性が挙げられていますが、これらは制御できない因子になります。その他の因子として、高血圧,心臓疾患,脳卒中,糖尿病,および高コレストロール等も当該疾患の発症に間接的に係わると考えられています。これらの疾患にならないように、あるいは重症化しないように、医薬品や健康食品等を活用する事で、しっかり管理し、アルツハイマー病や脳血管性認知症にならないようにする事が求められると考えられます。

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2. 11月22日に医療用肥満症治療薬が薬価収載へ!

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● この商品は『GLP-1受容体作動薬』で、既に2型糖尿病治療薬として販売されているものと同一成分ですが、別の効能として、GLP-1受容体を介して、脳における食欲の調節機構に作用して、食欲を抑える効果、さらに、胃腸の動きを弱めて満腹感を持続させる働きがある事が分かり、肥満症患者さんに対する医療用の『肥満症治療薬』として、今年の3月に承認が得られ、この度、薬価の収載が行われました。

● 国内では、2型糖尿病治療薬として販売されている『GLP-1受容体作動薬(インスリンの分泌を促して血糖値を下げる働きがある)』は4社、『GIP/GLP-1受容体作動薬』が1社から販売されています。また、今回のような肥満症治療薬として、『GLP-1受容体作動薬』関連薬剤の開発を進めている会社が数社あります。

● ところで、現在、国内外で『GLP-1受容体作動薬』の供給不足が広がっていて、糖尿病患者さんへの治療に影響が生じ得る事が懸念されています。
● 主な原因は、これらの薬剤の対する需要の高まりに対し、各製薬会社の生産が追いつかない事によると言われ、今年の3月から、出荷停止や限定出荷となり、厳しい状況に置かれています。
● また、これに加えて、国の承認を取得している効能効果である「2型糖尿病」ではなく、適応外使用(自由診療)として、一部の美容クリニック等において「美容、痩身、ダイエット」の目的で、このタイプの薬剤の処方が盛んに行われている事から、薬剤の供給量不足にさらにダメージを与えていると言われています。
● 結果として、糖尿病患者さんの治療への影響が出始めているようです。

● さらに、『GLP-1受容体作動薬』の副作用に関し、糖尿病専門医は、これらの薬剤に対する使用経験が十分にあるため、発現するとしても、便秘、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状の副作用が出る位で、大きな問題は生じてないようです。
● しかしながら、『GLP-1受容体作動薬』の添付文書には、重大な副作用として、「低血糖(本系統の糖尿病治療薬の単独使用では殆ど発生しないと言われている)」、「急性膵炎」、「胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸」の他、アナフィラキシー、血管浮腫等が記載されています。
●『GLP-1受容体作動薬』の使用経験が浅い医師が、「美容・痩身・ダイエット」目的で、これらの薬剤を患者さんに安易に処方すれば、思わぬ『健康被害』が生じる事も起こり得ると予想されます。
● 厚生労働省も糖尿病ではないヒトへの本剤の投与は、有効性、安全性等が確認されていないとして注意喚起をしています。

結論

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1. 老化を抑えるかもしれないサプリメントNMNに話題沸騰!

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 11月7日の朝日新聞に、“「老化抑えるサプリ」ひしめく通販商品” と題した記事が出ていましたが、その後いろんなメディアを注意して見ていると、確かにいたる所に、いろんな会社のNMNの広告が出ている事に気が付きました。『人生100年時代』に呼応する勢いで、多くの製品が販売されているようです。


「若返って寿命が延びるかもしれない」と期待されているのは、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)というものです。この物質の製品区分としては医薬品や医薬部外品のように何らかの薬理作用があるものではありません。また、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)のように、薬理作用はないものの、何らかの機能性を表示できる範疇にも該当しない『いわゆる健康食品(薬理作用もないし、機能性も表示できないもの)』に該当します。

尚、株式会社CloudNineのNMNは2023年5月25日にRefeelas(リフィーラス)という商品を機能性表示食品として消費者庁に届出ています。しかし、この届出表示は「本品にはNMNが含まれるので、肌が乾燥しがちな方の肌の潤いおよび肌弾力を維持し、肌の健康を助ける機能があります。」という内容で、『老化を抑えるサプリ』とは、少し異なるように思えます(肌のたるみは生理学的な老化と言えるかもしれませんが、老化の一部でしかないと思います。2023年11月16日時点の確認)。

NMNが期待される理由については、どの製品にも、以下のような同じような説明がされています。
・NMNは、ビタミンB3から生成され、生体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド )に変わります。
・NADはヒトが生きるうえで欠かせない補酵素で、加齢とともに減少し、細胞や臓器の低下につ ながると考えられています。従って、老化はNADが減少することによって起こり得る可能性があります。
・一方、ヒトにはサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)という遺伝子があり、老化と寿命の制御に大事な役割を果たしていると言われています。
・NADは、この長寿遺伝子を活性化すると考えられており、加齢と共に減少するNADを、NMN を投与することで増加させることにより、老化の抑制に繋がる可能性があり得ます。
・現段階では動物試験の成績しかなく、ヒトでも同じような事が生じるかは、分かっていません が、ヒトでの研究も始まっており(安全性に関する臨床試験は一部の製品で行われています)、今後の結果が期待されています。

 幾つもあるNMN製品について、調べた所、大手では「三菱商事ライフサイエンス」、「大正製薬」、「NOMON(帝人の子会社」、「日清ファルマ」等で、その他に多くの会社がNMNの製品を発売しています。販売されている製品の内容は千差万別で以下のような違いがあります。

① 1ヵ月(30日分)の販売価格が、1万円前後から12万円位するものまである。
② 1日当りのNMNの含有量が、100㎎から600㎎位まである。
③ NMN1㎎当りの単価も、1円前後から、20円位するものまである。
④ NMN単品の製剤から、NMNの他に、レスベラトロール(ポリフェノールの1種で、サーチュイン遺伝子の働きに関与しているという報告があります)等を配合しているものもある。
⑤ NMNの純度は99%、99%以上、あるいは99.9%含まれると記載されている。
⑥ GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)の認定工場で製造されている(認定されているか不明の製品もある)。

GMP認定工場

医薬品のGMPは、製造所の法律上の許可要件になっているのに対し、健康食品のGMPガイドラインは、事業者による自主点検結果を第三者(認定機関)が認証する民間主導の制度となっています。尚、GMP認定工場で製造された健康食品であることが認められた場合には、認定機関より、GMP認定工場で製造された製品に「GMP製品マーク」の表示の承認が行われます。

⑦ NMNの原料が国内製造製品である(輸入品の場合も多くある)。

  
以上のように、「老化を抑えるかもしれない」と言われているNMNが、通販サイトを中心に話題が沸騰しています。これに対し、朝日新聞が大手通販サイトの楽天とアマゾンで人気の商品について、NMNが包装に表示されている通りに含有されているか調査したところ、NMNが検出されない商品が複数ある事が確認されています。医薬品でもない、保健機能食品でもない、『いわゆる健康食品』だから、規制が緩い事に起因しているかもしれません。今後、ヒトを対象とし、対照群と比較した臨床試験が実施され、少なくとも何らかの老化の衰えが抑えられるような機能性が表示できる製品が出てくれば、『人生100年時代』に大きく貢献することが期待されると考えられます。

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