< 開発戦略 >

〇 国際共同試験による開発

臨床試験の中でも、国際共同試験による開発がかなりの割合を占めてきた背景 として、開発コストの削減、各国市場への早期導入、他民族のデータの受け入れ推進、標準的な非臨床試験の重複実施の回避、臨床治験のICH E17国際共同試験ガイドラインの活用、各国収集症例数の削減等多くのメリットによるものと考えられる。日本が国際共同試験に参加する際、早期申請・承認取得、海外データの活用、ドラッグ・ラグの解消等のメリットが多いが、一方で、治験開始までの準備期間の長期化、初期投資額の増加、日米欧同時申請の場合、時間とリソースがかなり切迫する事(例えば欧米で作成された申請資料CTD【コモン・テクニカル・ドキュメント】では、日本特有な記載事項がかなりあるので、書き直し・追記作業にリソースが必要な事等)の問題も生じるので、日米欧で申請時期を多少ずらす等の工夫も検討する必要がある。

〇 ブリッジング試験による開発

最近は、国際共同治験が主流になりつつあるので、あまり使われなくなってきたと言われているが、日本の医療環境からプラセボ(偽薬)との差が出しずらい治療領域も存在することが知られている。このような場合、国内外の内因性・外因性の民族的要因も考慮し、海外で実施されたプラセボとの二重盲検試験(統計的な有意差が得られている試験)とのブリッジング試験を国内では実施して、有効性の傾向が類似していることを示して、申請する方法も一案と考えられている。

〇 ドラッグ・リポジショニングによる開発

ドラッグ・リポジショニング法を用いた開発とは、他の製薬企業が既に上市した既存薬の中から、別の疾患(特に希少疾病:オーファンドラッグ)を見つけ出し、ライセンスを取得した上で、新たな適応症を対象とした新薬の臨床試験を行って、承認取得・販売する方式で、利点としては、探索研究や前臨床試験を省略し、新たな適応の有効性のみ 証明すれば申請出来るので、コスト削減、開発期間の短縮、安全性もクリアされているので成功確率は高くなる方法である。

< GMP関連 >

〇 GMP省令の改正

2021年4月にGMP省令の改正が交付され、8月1日付けで施行されているが、改正のポイントとしては、PIC/S GMPガイドラインと国内GMPガイドラインの6つのギャップに対応すべく、まず、初めに、① 施行通知で出された6つのギャップの省令への格上げ 【第3条の4、第11条、第11条の2、3、4】がなされた。続いて、② 医薬品品質システム(PQS)の導入【第3条の3】、③ 品質部門に品質保証(QA)業務担当を設置し、製造と品質管理のモニタリング【第4条】、④ 承認書と製造実態の齟齬防止について、GMPも責任を持つ【第3条の2、第5条、第14条】、⑤ データの信頼性の確保【第8条、第20条】、⑥ 医薬品と他の物品の製造設備兼用の禁止【第9条】、⑦ 製造所から製造販売会社への情報提供【第16条】等が新設、追記されているが、国際整合の観点から、PIC/Sで合意された世界標準となっているGMPガイドラインとの整合化が図られている。また、これ迄、製造販売業者がGQPにより、製造業者の業務を管理・監督してきたが、今回の省令改正により、製造業者の品質部門に品質保証を行う組織を新設し、製造業者が自らの業務の確認、管理、照査、評価あるいは承認等を行うとともに、製造販売業者への報告等も含め、製造業者の医薬品の製造・品質管理の業務の維持・管理が、より厳しいものになっている。

< 臨床試験 >

〇 海外臨床試験への参加

海外臨床試験(特に、米国を含めて治験を行う場合)に日本から参加するには、初めにFeasibility 調査を行って海外臨床試験への参加が可能な施設を選定する。その後、各施設での治験開始の準備を行い、Green light (治験依頼者が治験開始に必要な手続きが終了している事の確認)が得られ、治験薬、治験関連資材の搬入、スタートアップミーティング、システムトレーニングのすべてが終了して、「Ready to screen」が出ると、患者の組み入れが開始できる。Green light 迄に、治験責任医師/治験分担医師の履歴書、治験依頼書(Submission letter)、治験審査結果通知書(Approval letter)、IRB委員名簿(IRB Member list)、Protocol Agreement (合意書)、FDA Form 1572(Statement of Investigator)、Financial Disclosure(財務公開)、契約書/覚書(Contract/Agreement)、Delegation log、Lab Certification(精度管理記録)、Site ICF、治験届、IRB初回申請書類(費用関連、補償関連)、患者提供資料(説明資料、参加カード等)、GCP、EDC訓練記録(Training Records)等の資料を収集することになるが、国内試験にはない作業(例えば、FDA Form 1572、Financial Disclosureの入手、医療機関との契約内容の交渉、必要な書類の翻訳等)があるので時間的な作業計画に留意する必要がある。

〇 CRO(開発業務支援機関)企業選択時の留意点

国内には、多くの国内、海外CROがあり、どのCRO(特に、臨床試験を委託する場合)を選べばよいか、迷う事と思われる。IQVIAサービシーズジャパン(株)、パレクセル・インターナショナル(株)、シミック(株)、イーピーエス(株)、メディサイエンスプラニング(株)、エイツーヘルスケア(株)等、多くのCROがあり、それぞれ特徴があり選択する際に、既存のデータや評判等を基に、候補を数社に絞って、実際に面談して決めることになると思われる。我々としては、新医薬品の申請後に実施されるGCP査察において、申請した個別の患者データと医療機関が保有する生データとの間に齟齬が見つかって、申請取り下げ、生データの再確認、再統計解析、申請資料の修正、再申請という大きな時間的なロス(承認の遅れによる総売上げの減少)が、最も危惧するところである。従って、CROを選択する際には、企業規模、CRA(臨床開発モニター)の数、過去の実績、財務状況も大事な判断材料であるが、個々のCRAに医療機関における原データに対する直接閲覧の技術を具体的にどのようにトレーニングしているか、またRisk-based monitoringで実施される治験において、各施設のモニタリング回数を、どのような根拠、理論に基づいて設定しているかについても、CROとの面談時には、詳しく聴取する必要がある(CROとの面談時に同席も可能です)。

< 承認審査 >

〇 新医薬品承認審査実務における留意点

医薬品医療機器総合機構(PMDA)において新医薬品の承認審査業務を実施する際には、薬機法の規定に基づき承認の可否について判断する事になるが、その場合、主に以下の5つの事項に留意する必要がある。

① 実施された試験や提出された資料の信頼性が担保されている事。
② 適切にデザインされた臨床試験結果から、対象集団における有効性がプラセボよりも優れていると考えられる事。
③ 得られた試験結果に臨床的意義があると判断出来る事。                     
④ ベネフィットと比較して、許容できないリスクが認められない事。
⑤ 品質確保の観点から、有効性及び安全性を有する医薬品を恒常的に供給可能である事。